もう40年近く前に実際にあった話です。
1つは当時の私の上司の話で、もう1つは私自身の経験したことです。
当時はこんなことが、日本の製造現場でも起きていたんです。
形状を省略したら、物まで省略されちゃった!
ある厚さを持った上図形状Aは、当時のJISでは対象記号無しでBの様に描いてもOKでした。
設計者はBの様に描いて部品手配を依頼し当然、
の形状の部品が仕上がってくると思っていました。
でも手元に来たものは、笑い話のようですが
だったんです。
手元に来たその部品を見た時、茫然自失だったそうです。
表と裏が?
私が実際に設計した部品(イメージ)です。
ゴムシート状の表側に矩形の突起が互い違いに配置され、
表側の突起の真裏に円柱状の突起がある部品です。
つまり断面は、
の様な感じになっているはずなのですが、試し打ちに初めて立会に行くとそこで型から出てきた部品の断面は、まさかの
表と裏の突起位置ずれです。
それを見たときの私の頭の中は真っ白でした。
図面を描き間違えたか?
血の気がどんどん引いていきます。
何十万か何百万の損失だと、もう動転しています。
図面も持っていっていないという失態で、こっそり確認もできません。
同行してくれた先輩社員が、形状の異変に気付いて加工メーカー担当者に確認しています。
結果、図面は間違っておらずメーカーのミスだと判明しました。
欲しい物ができなきゃ意味がない!
なぜこんなことが起きたのか、今となっては知るすべも有りませんが、いくら図面が間違っていないと言っても、欲しい形の物ができないことには目的を達成したことになりません。
こちらの正当性をまくし立てて、相手を責めるだけでは解決になりません。
もちろん相手にも図面の理解をしっかりしてもらう必要はありますが。
対策として良いのかどうかは別として、部品製作者にできるだけ誤解を与えない様、注記に「左右対称である」とかコメントを入れたり、詳細拡大図を入れたりした図面を作成する様になりました。
図面を正しく理解している人間とその図面からものを作る人間が仕様について確認しているケースなら図面に描ききれていないことも直接伝えられますが、図面が独り立ちして海外でポイッと渡される様な環境では、あうんの呼吸でやりとりなんて考えられません。
相手の能力の見極めも必要ですし、ポイッと投げられてもその通り作れば間違いない図面を描くことが求められます。
その最たるものは、幾何公差でしょう。