南アフリカのアパルトヘイト、インドのカーストなど人種や身分差別について、日本ではあまり馴染みがないのでピンとこないかもしれません。
日本でも部落差別という言葉を教科書で習ったくらいで、実は本当のことを知りません。
センシティブな話題ですが、インドを語る上で避けづらいことですので、少しだけでも触れておきたいと思います。
時々、インドのカーストは法律上禁止されているのではという方がおられますが、憲法でカースト制度が禁止されているわけではないようです。
禁止されているのはカーストによる差別で、カーストそのものは禁止されていないのです。
逆カーストという弊害
在印時、役所に出す書類が有って記入するように言われたのですが、そこにカーストを記入する欄があったのです。
私は書かなくていいと言われましたが、ちょっとした衝撃でした。
その書類がカーストを書く意味があるものだったのかどうかわかりませんでしたが、カーストによる不公平感を減らす目的で、カーストを書かせて身分が低い人達を優先的に扱うためにそういった欄があるというインド知人の説明でした。
低カーストの人は総じて教育の機会にも恵まれず就職もできずにいるため、教育レベルに多少難があっても低いカーストから一定数の公務員採用枠があてがわれる制度もあるそうです。
そうなると、普通に公務員になりたい人は、狭き門となり、その制度がなければ採用されたかもしれない人から逆差別という不満が出てきます。
首都デリーでも逆差別に抗議するデモが有りました。
カーストってわかるの?
カーストの歴史や内容はネットで調べればたくさん出てきますから、そういうことはそちらにお任せするとして、現地に住んでいてカーストを直接的に感じることは多くはありませんでした。
ただ差別ということは多く有ったと思います。
というか、それがカーストから来るものなのか、貧富の差から来るものなのか、同じものなのかがわからないのです。
単なる役割分担なのか、身分制度から来ているのかは、わかりませんでした。
何千という身分(仕事の種類)があっても個々がどういうものなのか全くわかりません。
インド人の知人に聞いても、よくわかりませんでした。
彼らが、言いたくないからなのか、本当に知らないからなのかすらわかりません。
名前(名字?)でカーストがわかるようなことを言っていた人もいました。
職業でわかるケースもあります。
こんなこともありました。
工場内のトイレに行こうとした時、そのトイレには行かないで階上にあるトイレを使ってくれと。
現場のそのトイレは、カーストが絡んでいるということをあとで教えられました。
今でも、異なるカースト間での男女交際や結婚は厳しく禁止されていて、守らないと言う理由で名誉殺人が行われたという新聞記事を何度も目にしました。
日系の会社で低いカーストでも優秀な人材を教育しリーダーにしたが、部下がそのリーダーより高いカーストだと言うことを聞かないなどうまく行かなかったという話を聞いたことがあります。
総じて考えると、やはりカーストを隠すことは難しいのだと思います。
インドの人達はどう思っているのか
このことは、聞く人によっても違う回答になると思いますし、どこまで正直に話してくれるかわかりませんから、こうだと言うことはできません。
ただ、若い人でしっかりと教育を受けた人の中には、いい制度だと思っていない人もいることは確かなようです。
本人の能力とは全く関係のない事で、その能力が活かされないというのはインド社会にとって大きな損失だと思わずにいられません。
これまでのインドには、必要だったのかもしれないけれど、これからのインドには必要ないものだと考える人が増えて、インド社会が変わっていく姿を目にしたいと思います。